新しい都市計画へ、諫早市が方針/市街化区域など〝線引き〟廃止/土地利用の規制緩和目指す
2025年01月04日(土)
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諫早市は、長崎市など近隣の2市2町でつくる県の長崎都市計画区域から離脱する意向を表明。諫早市単独で新たに(仮称)諫早都市計画区域を定める方針を固めた。「諫早市の新しい都市計画」の実現に向け、市街化区域と市街化調整区域とに区分する、〝線引き〟制度を廃止して、土地利用の規制緩和を目指す。
2025年度から新たな都市計画制度の設計を行い、27年度の実現を目標に手続きを進めていく構えだ。ただ実現には長崎都市計画区域を設定している県の意思決定が必要となる。このため、諫早市は今後、県や長崎市や時津町、長与町といった構成自治体などと調整を行っていく。
「市街化区域」は、すでに市街地か、優先的・計画的に市街地として整備するべき区域のこと。一方、「市街化調整区域」では建物の建築などが制限される区域を指す。新たな都市計画区域のもとでは、市街化区域と市街化調整区域の区分を廃止。土地利用の自由度を高めたい考えだ。
同市内では現在、京セラ㈱長崎諫早工場(仮称)など新たな企業進出のほか、(仮称)ゆめタウン諫早など大型プロジェクトが進行しており、定住人口の増加などが期待される。しかし一方で住宅の供給不足や若者の流出などが大きな課題となっている。
このため市は2021年度から、将来を見据えた新たな土地政策のあり方について検討を開始した。23年1月には市民アンケートを実施。現行の市街化調整区域における土地利用政策等の設問においては、〝問題が生じている〟や〝良い効果が出ていない〟とした回答が全体の約6割を占めた。
有識者らで組織する諫早市の新しい都市計画検討委員会は計6回の会議を開催。議論を重ね、▽長崎都市計画区域から離脱し、新たに(仮)諫早都市計画区域を定める▽区域区分を廃止し、現行の用途地域を継続する▽旧市街化区域に、新たに立地適正化計画を策定する▽旧市街化調整区域全域に、新たに特定用途制限地域を定める―といった提言内容をまとめた。
特定用途制限地域の導入に関しては、地域の特性に応じた適切な土地利用への転換を誘導していく構えだ。具体的には▽(仮)インター・産業団地周辺地区▽(仮)幹線道路沿道地区▽(仮)生活拠点地区▽(仮)田園環境保全地区―への分類を想定している。
このうち(仮)インター・産業団地周辺地区では流通業務施設や工業施設、商業施設等の立地を誘導。(仮)幹線道路沿道地区においては中小規模で郊外型の商業施設や生活便利施設の立地を誘導したい考えだ。
今後5年間で約3000人の雇用が増加すると見込まれる。定住人口の増加を目指す諫早市は県に対し、長崎都市計画区域の区域指定の見直しおよび同市の区域区分廃止の推進を特別要望。この中では▽諫早市を単独の都市計画へ再編すること▽区域区分を定めないこと▽都市計画決定または変更について早期に手続きを行うこと▽区域区分に替わる補完制度として、新たな土地利用規制・誘導施策について適切な指導・助言を行うこと―を求めた。
これに対し大石賢吾知事は、諫早市の方針を十分に尊重する意向を示した上で、県としての対応を検討する考えを示した。
市は、「諫早市の新しい都市計画」に関する基本方針を策定。住宅や店舗、オフィスなどを建てやすくなることで、若い世代の定着を図る方針。市全域におけるバランスのとれた魅力あるまちづくりが必要だと考えている。