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【インタビュー】長崎労働基準監督署 井上和秀署長に聞く/7月1日から全国安全週間/規則改正踏まえ、熱中症対策に重点

2025年07月01日(火)

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人物

クローズアップ

井上署長

建設業(休業4日以上)

2024年労働災害発生状況

 1カ月の準備期間を経て、本年で第98回目を迎える「全国安全週間」が、7月1日から7日まで実施される。スローガンは『多様な仲間と 築く安全 未来の職場』。今年は第14次労働災害防止計画の3年目。「人命尊重」という崇高な基本理念のもと、いかに労働災害件数を減少させていくかが重要な課題だ。昨年4月に着任、長崎労働基準監督署全体の指揮を執る井上和秀署長に、行政運営方針や、災害ゼロに向けて心掛けるべき点などを尋ねた。


―長崎労働局の行政運営方針について教えてください。

 県内の幅広い産業で続いている人手不足感の解消、物価上昇を上回る持続的な賃上げを推進するとともに、多様な働き方の実現に向けた取組を実施するとしております。また、これらの課題に対して総合労働行政機関としての機能を発揮し、4行政分野(労働基準、職業安定、雇用環境・均等、人材開発)における雇用・労働施策を推進してまいります。

 具体的には、事業場内最低賃金の引上げに取り組む中小・零細企業の生産性向上に向けた支援、非正規雇用労働者の正社員化への促進、同一労働同一賃金の遵守などを総合的、一体的に推進し、安全で健康に働くことができる環境づくりの実現に向けて、窓口相談や説明会、ホームページ等あらゆる機会を通じて周知を行うとともに、きめ細かな支援を行ってまいります。

―長崎署管内における災害発生状況や事故の型別は。

 2024年における建設業のコロナ関連を除く休業4日以上の死傷災害は、業種別では4番目に多く、79人(全体比12・4%)、昨年に比べ4人減、率で4・8%減少した。事故の型別では「墜落・転落」災害が32人と全体の41%を占めており、起因物別では「はしご等」が23・5%、「建築物・構造物」が14・7%となっています。

 本年5月末現在における長崎署管内の建設業の休業4日以上の死傷災害は219件(昨年同時期比9人減、3・9%減)で減少している状況にあります。

―災害ゼロに向け最も心掛けるべき点とは、どのようなことですか。

 建設業で最も事故の型として多い「墜落・転落」災害では、はしご等による労働災害が多く発生していることから、厚生労働省が作成している「はしご、脚立のチェックリスト」などを参考に、適切な使用方法をお願いするとともに、高さ2㍍以上の作業にあたっては高所作業に位置づけられるため、足場(移動式を含む)または高所作業車など作業床が安全に使用できるものを検討してほしい。

 「墜落・転落」災害を防止するため、手すりの設置などの墜落防止措置を講じることを基本に、建設現場ではどのような職種においても墜落・転落の危険性を伴うことから、墜落時保護用ヘルメットとフルハーネス型墜落制止用器具の着用の徹底が必要であると考えております。

 ―これから本格的な暑さとなり、熱中症が心配されますが。

 梅雨入りし、蒸し暑い季節を迎えます。

 昨年の長崎県内の熱中症における労働災害状況は、全産業で24人。このうち建設業は3人となっています。

 このような状況を踏まえ、今年6月1日から労働安全規則が改正され、職場における熱中症対策が強化されています。改正のポイントは、熱中症のおそれがある労働者を把握した場合、どのように対応するかが事業場に求められる内容になっています。

 熱中症は適切な初期対応で死亡災害や重篤な災害に至るのを防ぐことができるといわれています。

 つきましては、規則改正に対する対応、また7月が「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」の重点取組期間となっていることから、暑さ指数(WBGT)に応じた取り組みをお願いします。

―最後に、建設業に携わる方々に一言お願いします。

 今までは災害防止という安全面の取り組みが中心だったと思いますが、若い優秀な人材を確保するため、また各企業の技術の次世代への継承を進めるためにも、労務面での労働条件の整備に力を入れて、安全で快適、安心して働くことができる魅力ある職場づくりをお願いします。
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【プロフィール】 井上和秀(いのうえ・かずひで)
 1965年、熊本市に生まれる。1989年に労働基準監督官として旧労働省に採用。初任地は広島。その後、山口での勤務を経て、1996年から再び広島労働局管内で勤務。島根労働局浜田労働基準監督署長、松江労働基準監督署長を歴任。昨年4月から現職。





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